こんにちは。OTビジョントレーナーのともびじょんです。
本日のご相談はこちら。
「うちの子、最近授業中に騒いじゃうみたいなんです。
毎日のように先生から電話があって…。
自分から騒ぐことはないんですが、お友達が騒いでいるとそれにのっかっちゃうみたいで…。
授業がなりたたないそうです。」
小学校5年生の男の子Aくんです。
小学5年生の男の子、あるあるでしょうか….。
確かに小学5年生の男の子にはエネルギーがあり、ふざけたり騒いだりすること自体は発達の一部として自然な行動でもあります。しかし、「授業を妨げる」「集団のルールを逸脱する」レベルになっている場合は、やはり適切な“指導”や“枠づけ”は必要です。
ただし、この「指導」という言葉が、叱る・制止するだけの行為ではないということがとても重要です。
では、「指導」とは何を意味するのか??
🔍【“指導”とは何を意味するか?】
❌ 単なる禁止や抑え込みではない
- 「騒がないで」「静かにして」と言うだけでは、どうすればよいかがわからない子が多いです。
✅ 本来の“指導”=「行動の意味を読み解き、代替行動を教えること」
- たとえば、「気持ちが高ぶってしまったときは、深呼吸する」「先生の合図が見えたら、一旦やめる」など、自己コントロールの具体的方法を教えることが“指導”です。
「悪い子」扱いされると、「どうせぼくはできない」と学習性無力感(やる気の喪失)が育ってしまいます。
指導が行動の「理由」や「背景」を無視した場合、子どもは“納得できず”に同じ行動を繰り返すことがあります。
✅【では、どのような指導が効果的か?】
- 「できている行動」に注目する
→ 例:「今はちゃんとイスに座れてたね」「さっきは英語のとき、話しかけられても我慢できてたね」 - 予測と選択を一緒に考える
→ 例:「もしまた〇〇くんが話し始めたら、どうするのがかっこいいと思う?」 - ルールの共通理解
→ 教師・親・本人の間で、「どこまでがOKか」の基準を言語化・可視化する。 - 成功体験をつくる構造化
→ ふざけずに過ごせたら「○分のふざけポイントクリア」など、ゲーム感覚で達成を味わえる支援。
✨まとめ:指導は「否定」ではなく「育てる」ために行うもの
「場面によってはきちんとできる」子は、適切な導きがあれば大きく伸びる可能性を持っています。
「騒いでしまう」ことをただ咎めるのではなく、
- なぜそうなるのかを理解し、
- どうしたら良いのかを一緒に探し、
- できた時にしっかり認める
では、そもそも「なぜ騒いでしまうのか」を考えましょう。
聞いてみると、その騒いでしまう行動は、音楽や英語、リトミックの時に多いようです。そして自分から騒ぐことはなく、騒いでいる友達にのっかってしまう。コンサートの時などは静かにできる。これらの情報をもとに、以下にまとめてみます。
1. 【行動の全体像】から見えてくること
● 騒ぐのは「特定の教科」
→ 音楽・英語・リトミック。これらは「聴覚・リズム・身体の動き」が大きく関わる授業です。
● 常に自発的ではなく「人の影響を受けやすい」
→ 「誰かが始めると乗る」タイプ。これは【感情や行動の自己制御力】や【周囲の空気への感受性】が関係しています。
● 「できないわけではない」
→ コンサートでは静かにできる=【状況次第では統制可能】。つまり、課題は「能力」より「場面ごとのコントロール力と環境設定」。
2. 【考えられる背景要因】
■1. 感覚統合の過敏・鈍麻
- 音や動きに過敏/鈍感であると、特に「音楽」や「オイリュトミー」などで刺激が過多になり、落ち着きを保ちづらくなる。
- →【感覚プロフィール】の確認が有用です(例:聴覚入力に対して興奮・不快・回避行動など)。
■2. 視覚優位で聴覚指示が通りづらい可能性
- 英語や音楽は「耳からの情報」が中心。視覚からの情報理解を得意とする子にとっては、指示が抽象的で集中しづらい。
- →視覚支援(板書、ワークシート、図など)が少ない授業で注意が散漫になることも。
■3. 注意制御・衝動抑制の困難
- 誰かの話し声・動きに即座に反応してしまうというのは、【注意の選択的制御】や【感情のコントロール】に苦手さがある可能性。
- ADHD傾向がある子に典型的ですが、「教科学習の形態」によって大きく左右される点が特徴です。
■4. ソーシャルスキルの発達段階
- 周囲に合わせやすい、集団の中でのポジションを気にする(=いわゆる”目立ちたい”というより、”浮きたくない”気持ち)。
- →「からかわれたくない」「仲間でいたい」がベースにあり、自己主張や自己抑制よりも“同調”を優先してしまう。
3. 【支援の方向性】
◆ 環境調整
- 「静かにすべき」と強調するより、「どうすれば静かにいられるか」の工夫を可視化
→ たとえば、授業前に【行動目標カード】を本人と一緒に決めて提示。
→ 目標例:「英語では耳で聞くのががんばりどき!」「3回だけ声を出していい」など具体的に。
◆ 感覚プロファイルを知る(感覚処理の傾向)
- 聴覚刺激がストレスになっているなら、イヤーマフや席の配置変更、視覚情報の補強を検討。
- 一方で、鈍感タイプで「動きたくてしょうがない」場合は、事前に身体を動かすタイム(例:1分の動作活動)を入れることで集中しやすくなることもあります。
◆ ビジョントレーニング/視覚的サポートの導入
- 授業指示や活動内容を視覚的に整理して提示することで、混乱や不安を軽減できます。
- ワークシート形式の「今から何をするか」の見える化も有効です。
◆ ソーシャルスキルトレーニング(SST)
- 「今ふざけたらどうなる?」を予測→選択→振り返りする支援を繰り返し練習します。
- → たとえば3コマ漫画などで「ふざけた結果」「がまんできた結果」を一緒に考える。
◆ ご家庭での声かけの工夫
- 「また怒られたの?」「なんで騒ぐの?」ではなく、
➤「今日はどんなことがあって、どうしたかったのかな?」
➤「その時、どう動いたらかっこよかったかな?」と内省的対話を促す関わりを。
最後に:Aくんの強みに注目を
- Aくんは「静かにできない子」ではありません。「場に合わせた行動が難しいときがある子」です。
- 興味や環境によってはきちんと統制できる力がある子です。
- 周囲がそれを理解し、成功体験を重ねることで、行動の安定化は可能です。
コメント