小学5年生の男の子です。
宿題のプリントをいつもなくしてしまいます。
プリントをはさむファイルを用意してもらいました。
ファイルを忘れてしまいます。。。
ファイルを忘れないように、目立つようにしました。ビビットなカラーのテープを貼り、見やすいように「宿題ファイル」と書きました。
ファイルは毎回持ってくるようになりました。すばらしい!
…中身のプリントがありません。。。いや、数枚あります。あきらかに足りません!!
プリントの枚数を「5枚」と決めました。そして「5枚」と書きました。
さあ、まだ5枚そろったことがありません。試行錯誤中です。
「プリントをなくす」というのは、小学生男子に多いお悩みのひとつかと思います。
それは「不注意」や「だらしなさ」ではなく、“仕組みづくり”と“視覚的な手がかり”で予防できることが多いです。
原因と対策を考えていきましょう。
🔍 考えられる主な要因と解説
① 視覚記憶(ビジュアルメモリー)の弱さ
- プリントをどこにしまったか、どんな色や大きさだったか、といった見た情報を記憶する力が弱いと、忘れ物が多くなります。
- これは「見たものを脳に定着させる力」の問題で、いわゆる「記憶力」とは別です。
② 空間認知のズレ
- プリントを入れる「位置」の感覚があいまいだと、ランドセルや机の中で「入れたつもり」が実はズレていた…ということが起こりがちです。
- 空間把握の弱さがある子は、「右と左」「上と下」などの方向感覚にも苦手さを持つことがあります。
③ 視覚的注意の持続が苦手
- 「プリントが配られた瞬間」への注意が向かず、結果としてどこにしまったか覚えていない。
- これは「見る力」の中でも選択的注意(セレクティブ・アテンション)に関連しています。
- 特にASDやADHDの傾向がある子どもに多く見られます。
🧠 選択的注意(Selective Attention)とは?
選択的注意とは、たくさんの情報の中から「必要な情報」だけを選び取って注目する力のことです。
たとえば——
教室の中でザワザワしている状況でも、先生の声に注意を向けて話を聞く。
何枚もプリントが配られても、「宿題のプリント」だけを見つけて取り出す。
こういった行動には、選択的注意の力が必要です。
🔍 脳科学的な観点から見ると?
- 前頭前野(PFC)や頭頂葉などがこの機能に関与しています。
- 特に実行機能と密接に関係しており、「何に注意すべきか?」を判断し、「他を無視する」制御を行います。
- ADHD傾向の子どもはこの機能に弱さがあることが多く、「気が散りやすい」「必要な情報に集中できない」という困りごとに繋がります。
④ 身体の動作の見通しが苦手(実行機能の弱さ)
- 「プリントを受け取る→入れる→持ち帰る」という一連の動作の流れをうまく計画・実行できない。
- ランドセルのどこに入れたか、その後の動線を覚えていない、などが含まれます。
⑤ 感覚過敏や感覚鈍麻の影響
- 紙の感触やランドセルのごちゃごちゃ感が不快で、無意識に扱いが雑になることも。
- 逆に、身体の感覚が鈍く、うまく入れたつもりで入っていなかった、ということもありえます。
🧠【対策】
① ファイルの中でプリントの位置が決まっていない
→ 無意識にどこかに入れて、見つからなくなるパターン
📌対策:
- プリントの「住所」を決める(例:算数=左、国語=右など)
- クリアファイルではなく、ポケットが仕切られているファイル(6ポケット・12ポケットなど)を使う
- 表紙に「入れる順番」や「入れる教科」をイラストや色で貼る
② ファイルに入れたつもりで、入っていない
→ 入れる行為が抜けている(ワーキングメモリの問題や注意の分散)
📌対策:
- 「プリントをファイルに入れたか確認するチェックリスト」をランドセルに貼る
- 1枚ごとに「しまう動作」→「指差し確認」→「声に出して確認」などマルチモーダル確認
(例)
✅プリント見つけた → ✅声に出して「算数入れるよ」 → ✅ファイルの該当ポケットへ → ✅表紙に〇をつける
「マルチモーダル確認」とは、複数の感覚(モダリティ)を使って確認する方法のことです。特に発達に凸凹のあるお子さんにとって、ひとつの感覚だけに頼ると抜け落ちやすいため、視覚・聴覚・運動感覚などを組み合わせて確認することで、記憶や行動の定着が格段に良くなるのです。
③ ファイルごと教科書の間に挟まって見えなくなる/落とす
→ 荷物の詰め方やランドセルの中の構造に問題がある場合も多い
📌対策:
- ランドセル内の「場所指定」(ファイルは背中側/ノートの手前に必ず入れる)
- 「出す順・しまう順」を視覚化したシートをランドセルの蓋裏に貼る
- プリントはA4クリアファイルではなく、「ファスナー付きソフトケース」にする(中身がバラけにくい)
④ 持ち帰るときに他の物に気を取られて忘れる
→ 学校からの持ち帰り行動自体に注意の切れがある
📌対策:
- 「今日持ち帰るものシート」をランドセルに貼る
- 教室の机の引き出しに「プリント回収用の赤い箱」など、本人専用の場所を設ける
- 帰宅前に友達や先生に「見守り声かけ」をお願いできれば理想
⑤ 宿題だと認識できていない/「自分ごと」になっていない
→ 提出物としての価値や目的を理解していないケース
📌対策:
- プリントに「提出日」「提出先」「内容」を明記し、本人にも共有
- 書き込むときに「これは◯日◯先生に出すもの」と口頭で伝えてから書く
- 書いたあと、「宿題ボックス」や「提出袋」に一時保管するルールづけ
📄 ご家庭でできる!簡単チェックシート(例)
ランドセルに貼って使えるように:
□ プリント見つけた
□ ファイルの正しい場所に入れた
□ しっかりファスナーを閉じた
□ 今日の宿題プリントはある?
チェックリストを「見える化」すると、視覚優位な子どもに効果的です。
🧸 まとめ:失くす子は「自分の苦手ポイントに気づいていないだけ」
プリントをなくす子は、「だらしない」のではなく、
情報を整理するスキルや仕組みが未発達なだけ。
だからこそ、「忘れない子に変える」のではなく、
「忘れても大丈夫な仕組み」を作ることが支援のコツです。
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